リーグ戦3連敗。しかも全て逆転負けと、波に乗りきれないグランパス。
相手はSRC広島。中国リーグに所属するアマチュアクラブ。両チームの差は試合目の練習にも見て取れた。ピカピカの天皇杯の公式球で練習するグランパスに対し、使い込まれたボールで練習するSRC広島。
しかしピッチに立てば同じサッカー選手。公式戦でしっかり勝って週末の長崎戦に追い風を吹かせたい。
J2クラブを相手にジャイアントキリングを狙うSRC広島だが、モチベーションが高いのはグランパスも同じ。普段は控えに甘んじている選手がこのチャンスをつかみ、クラブ内でのジャイアントキリングを起こすべく気合いは充分。
試合は開始早々に内田の強烈なFKが突き刺さり先制。
ところがリーグ戦同様、この後が続かない。引いて守る相手に対し、前掛かりに攻め続けるが決定力を欠き、逆にカウンターでピンチを招く。サイドバックが上がったスペースを利用されてしまう悪癖はなかなか改善されない。
この日がプロデビュー戦となった宮地も体を張って攻守に貢献するが、不慣れなポジションということもあってか決定的な仕事を作るには至らない。
そんな焦れる展開を一変させたのがこの男、青木亮太。
宮地に替わって後半からピッチに立つと、独特のリズムで相手を翻弄。
わずか8分でプロ初ゴールを決めると、そのまた8分後にも追加点。その後も押谷と杉森のゴールをアシスト。青木がボールを持つだけでスタンドを沸かせ、完全に今日の主役となった。
その青木のプロ初ゴールをアシストしたのが、加入以降なかなかいいところを見せられていなかった押谷。今日もそれまでいくつかの決定機を逃していただけに、自身の加入後初ゴール直後は、喜びを爆発させると言うよりは安堵の表情を見せていた。
足元へのパスでボールを保持するスタイルの中、裏抜けの上手い押谷・杉森・佐藤、そしてその動きに抜群のセンスで合わせる青木。成熟すれば相手にとっては非常に厄介な前線になれそうだ。
特に青木のパスを受けた杉森のゴール。サポーターからの期待も一際大きい2人だけに、こんなシーンを何度も何度も見たい。
最後の仕上げは佐藤寿人。ケガから復帰後はなかなか満足な出場機会がなかったが、今日はフル出場。最後まで相手DFと駆け引きを繰り返し、シモビッチのシュートのこぼれ球をしっかり押し込んでサポーターを沸かせた。
先制した後もたついたとはいえ、終わってみれば6-0の大差で約1ヶ月ぶりの勝利を収めたグランパス。次節は勝ち点1上回られている長崎を迎えての重要な一戦。前半戦も残り2試合。上昇気流は作り出した。あとはその風に乗るだけだ。
今日一番悔しい思いをしたであろう宮地。前日コメントでは「ターニングポイントとなる試合にしたい」と語っていた。プロ入りは青木の方が早かったとはいえ、自分より2つ年下の選手が自分に替って入った途端に2ゴール2アシスト。
その誠実な言動や人柄はサポータからの人気も高い。本来思い描いていたものとは違うだろうが、彼ならばこの試合は更なる飛躍のターニングポイントにしてくれる。