昨年一年間、常にピンと糸の張り詰めた、負けられないリーグ戦42試合を経験しただけに「何が何でも勝ち点3!!」という雰囲気ではないこの日はなんだかフワフワしていたように思えた。
「ターンオーバーだし」
「ユースが3人いるし」
「Jリーグ未経験者が4人いるし」
「浦和は結構主力出してるし」
失点を重ねてもスタジアム全体から「別に負けたっていいんだし」というような空気すら感じた。
3点目を決められ、風間監督が内田とワシントンの位置を入れ替えるよう押谷に指示を出し、それでも4度目のゴールネットを揺らされ、ようやくスタジアムが目を覚ました。
0-4からの逆転勝利を心から信じたサポーターがどれだけいたかは分からないが、少なくとも「せめて1点は返す!」という意地はあった。
結果、寿人のゴールで1-4。
負けたっていい試合なんて無い。やっぱり勝ってほしい。
でも惨敗したからといって何も残らない試合なんて無い。
例えば成瀬竣平。ユース所属でこの日がトップチームでのデビューとなった。左サイドバックとして記念すべき瞬間を迎えたが、前半はとにかく消極的だった。ボールを持ったらバックパス。目の前にスペースがあっても隣の選手に預けるだけ。
「前半で0-4になってしまった試合なんだから、ある意味開き直ってもっと挑戦してもっと失敗したっていいのに・・・」と思いながら見ていた。すると同じくデビュー戦となった萩野滉大が前半36分でベンチに下がり、入れ替わりで左サイドバックへ。
試合に慣れてきたのか、萩野の交代で火が付いたのか、左が合っていたのか、そこからの成瀬は別人だった。
ボールを持ったら仕掛ける、ドリブルで切り込む、クロスをあげる、果敢にシュートを放つ、ボールを欲しがり両手を広げてアピールする、体をぶつけて守備をする。
とにかくプレイを怖がらなくなった。周りの観客も成瀬の精一杯のプレイに拍手を送った。
次は前半から積極的な成瀬を見ることができるのではないかとワクワクしている。そして願わくば今日ほろ苦いデビューと成った大垣勇樹、萩野と一緒に勝利のホイッスルに喜びを爆発させる姿を見たい。