「覆水盆に返らず」
「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」
ところが、覆水が盆に返った。過去が変わった。
6月6日に行われた天皇杯2回戦でグランパスはPK戦の末に敗れた。はずだった。
競技規則の適用誤りが判明したかと思うと、実は反則をとったフェイントがそもそもファールではなかった、と、いくつかの判断が複雑に絡み合った結果が「PK戦のみやり直し」。
前代未聞の事態に平日17時の開門時には多くの人が集まった。
入場するとオーロラビジョンには謝罪文が。
選手がアップに現れたが、奈良クラブはいつも通りGKが先にピッチへ。
一方グランパスはGKとフィールドプレーヤーが同時にピッチへ。
アップ自体は粛々と進められた。
4人の審判団も必要なのかどうかは分からないがジョギングで体を温める。
選手紹介からの選手入場もいつも通り。
コイントスで奈良クラブ側のゴールを使うことが決まると、カメラマンが大移動。
大きな違いはここに。円陣が解かれると両クラブの選手がセンターライン上に並ぶ。
そしていよいよシャビエルのキックからPK戦が始まった。
寿人も今日はしっかりと決めてくれた。
騒動の発端となった(?)金久保も、今日は動きではなく、時間というフェイントを使って決めた。
ギリギリで決めた内田は苦笑い。というか髪を下ろした内田が新鮮。
アーリアも危ないながらもなんとか決めると、
以前FC岐阜に所属していた山田のキックはバーを僅かに超えてしまう。
外して落ち込む山田を笑顔で迎えた選手達。今回の騒動の一連の対応も含めて、すごくいいクラブだと思う。
最後は八反田が決め、今回はグランパスが勝利した。
グランパスの選手が喜んでいるのを見るのは本当に久しぶりだ。
GK同士健闘をたたえ合う。
金久保とランゲラックも笑顔で握手。
両チームエールの交換。特にグランパスサポーターの声援は、グランパスよりも奈良クラブへ向けられたものの方が大きかった。
今回のこのPK戦やり直し騒動は、結果としてグランパスが勝ち上がることとなった。
経緯についてとやかく言及することは避けるが、裁定を受け入れフェアプレー精神に則って再びピッチに立った両クラブ。
短い時間ではあったが爽やかで気持ちのいい空間だった。素直に喜べないかもしれないが、グランパスには奈良クラブの想いも背負ってこの先勝ち上がっていかなければならない。